適切な判断力を養うために―助産師会議

3月3日にタッコン郡事務所において、タッコン郡内の全助産師36名 (33名の助産師、3名の婦人保健訪問員)が参加し、助産師会議が開催されました。

今回の会議の目的は、農村部の自宅出産時(※)や村の一次医療施設での出産における緊急時の病院搬送において「助産師の適切な判断力を養うこと」です。発端は、搬送先である郡病院の産婦人科医が、村から病院に搬送された事例の振り返りを助産師と一緒に行った方がいいという助言により始まった、初の試みでした。

(↑講義の様子)

(↑産婦人科医自ら作成した講義資料)
会議では合併症として最も多い、「分娩後出血」と「妊娠高血圧症候群」について取り扱い、午前中は講義、午後は村や施設から郡病院に母体搬送があった重症事例の検討を行いました。
そして、事例検討の後には、村で助産師が搬送の判断に迷った事例についての共有も行い、産婦人科医から、その時の判断や対応について助言をしてもらいました。
講義の途中には、実務的な質問が出たりと、積極的な姿勢がみられました。

(↑実践的な演習も)
事例検討は、搬送時の判断が問われるため、産婦人科医師から助産師個人への批判にならないかを危惧していましたが、事前に医師と郡院長に説明していたこともあり、搬送先の産婦人科医師とのコミュニケーションをはかる良い機会となりました。

(↑事例共有)
会議にはタッコン郡保健局を管理監督するネピドー評議会から保健局担当者が視察に来ており、PHJが行っている実際の活動を知ってもらう機会にもなりました。
講義の前後に事前テスト・事後テストを実施し、助産師の理解度を測りました。事前テストでの全体の平均は62%、事後テストでは74%でした。

(↑事後テストを受ける助産師)
もちろん知識の確認だけでは、今回の会議の効果は測れないため、今後の搬送事例の検討をタッコン郡保健局のスタッフと共に行っていきたいと考えています。
※タッコン郡の農村部では自宅出産が全分娩の約半数を占めます。

保健センターの井戸の掘削工事

カンボジアでは一般診療や分娩が行われる保健センターといった医療施設でさえ、水を確保するのが難しい状況です。
支援地にあるアレアッタノー保健センターではこれまで二つ井戸(手動でくみ上げるタイプ)
がありましたが、すでに水が出ない状態でした。そのため、保健センターの
スタッフがこれまでは水を買ってきて、しのいできました。
そこで、今回新たに電動で水をくみ上げるタイプの井戸を作るため掘削工事をしました。

地面に穴をあけて、パイプを通し、そこにポンプを差し込んで、水を吸い上げる仕組みです。

完成後の井戸

保健センターの裏にあるタンクと井戸をパイプでつなげ、モーターの電源を入れるとタンクに水が溜まるようになっています。
もちろん日本と比べればまだまだ厳しい環境ではありますが、
井戸による水の供給という重要なインフラが整った保健センターでよりよいサービスやケアが提供できればと思います。

村での母子保健教育の様子

母子保健教育は、助産診療センターだけではなく、住民の住んでいる農村地でも実施しています。
今回は、民家を借りて、産後の女性を対象に、産後のケアに関しての保健教育を助産師と補助助産師が中心となって行いました。
産後の女性と周辺の住民15名程度が集まった中での開催となりました。

(首も座っていない赤ちゃんをつれて産後のお母さんが参加!)

(近所の人も一緒に聞いています。)
保健教育の前と後に産婦さんたちの理解度をはかるテストを実施しています。今回参加した産婦さんは優秀で、教育後のテストの結果がとてもよくなっていました。
村の女性が正しい母子保健知識を得る場を今後も提供していきたいと思っています。

(教育の後のテストを受けるお母さん)


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