保健センタースタッフから地域住民に向けた妊娠・出産の相談会

3月に6つの保健センターで妊娠や出産にかかわる疑問や質問に保健センタースタッフが答える相談会を行い、
合計72人の地域住民が参加しました。

各保健センターには妊婦も含め多くの地域住民が参加し、
健康的な食事や妊娠期の危険な兆候、妊婦健診についての質問がありました。

具体的には
「エコー検査がおなかの中の赤ちゃんに悪影響を及ぼさないか不安です」
あるいは、
「妊娠中にお酒を飲むこと、ベッドの下に火を焚くことは、
慣習となっていて良いことだ信じてきたが、健康に悪いと言われた。本当にそうなのか?」
といった質問がありました。

保健センタースタッフは、ひとつひとつの質問に丁寧に答え、
地域住民の中に根付いている健康に害を及ぼす恐れのある習慣を改善することや
妊娠中の適切な食事、休息、適度な運動の重要性について強調しました。

また、何か問題や体調に異変があった場合は、
すぐに保健センターに来院するように啓発しました。

この活動を通して、妊娠・出産に関する不安の解消や疑問の解決、
住民と保健センタースタッフの信頼関係の構築などが期待できます。
このようなコミュニティレベルの活動を今後も継続していきます。
【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

村の保健ボランティアの能力強化研修

農村地で安心安全なお産を支えるためには、「保健ボランティアさん」は欠かすことのできない存在です。
保健ボランティアは、Village Health Support Group (VHSG)のメンバーとして、カンボジアの各村に2人ずつ配置されます。
地域住民と保健センターや保健センタースタッフとの橋渡し役として、
保健教育を通して適切な保健知識を伝えたり、健康に関する相談にのったり、
地域の人々の健やかな生活を包括的にサポートします。

PHJは、事業地の6保健センターが管轄する村の保健ボランティアの能力強化研修を開始しました。
能力強化研修は、保健ボランティアが村で行う保健教育のための適切な知識とスキルを習得することを目的としています。
今回の研修では、妊婦健診と安全な出産に関する保健教育に焦点を当てています。
具体的には、妊娠期の危険な兆候の見分け方、保健センターでの妊婦健診と出産に関する啓発、保健に関する記録の取り方、家庭訪問の方法などを習得します。


講義だけでなく、グループディスカッションやロールプレイなど、
参加型のアプローチも取り入れ、より実践的な研修となりました。

【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

 

安全なお産をささえるダイアリー

PHJカンボジア事務所ではオリジナルダイアリーを制作し、
新年にPHJの事業関係者、たとえば現地カウンターパート、保健センタースタッフ、ボランティアなどに配布します。

1月に開催された保健ボランティア会議で、保健ボランティアと会議参加者に手渡しました。

このダイアリーはスケジュール管理やメモ帳とともに、母子の健康に必要な基礎的な情報もイラスト付きで含まれています(PHJの活動紹介も!)。
また、保健センターに連絡するための情報も記載されています。

ダイアリーを使って活動予定の管理や情報を整理することで、保健ボランティアの取り組みがより充実することを目指します。

会議の際に手ぶらで参加する人が少なくないので、このダイアリーを常に持参して、活動の予定や記録、会議の内容を記録する習慣をつける効果もあります。

「カレンダーとノートと保健教育の機能がひとつにまとまっていて、とても使いやすい」と保健ボランティアさんが話してくれました。
多くの人が手帳を使っている日本と違い、カンボジアの農村地域に住む保健ボランティアにとって、一年間使い続ける大切な一冊になります。

【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

 

医療者の指導・監督のための勉強会の実施

助産師の能力強化は、より安全安心なお産のために不可欠な要素のひとつ。そのために、助産師に対するスーパービジョン(指導や評価)が重要な取り組みです。
PHJでは、保健センターの現場で働くスタッフに対する指摘や評価で終わらせず、具体的な改善につなげていくサポーティブ・スーパービジョン(支援的監督)の効果的な実施を進めています。

12月に保健センターの助産師に対するスーパービジョンを行うシェムリアップ州保健局とソトニクム保健行政区のスタッフの勉強会を実施しました。
勉強会の講師は、保健省のスタッフ。保健省が定めるガイドラインに則って、妊婦健診、産後検診、分娩介助、緊急搬送についての講義、ダミーを使った演習、チェック・リストの使い方の説明と実技が行われました。


助産師などの保健センタースタッフに改善が必要な部分を指摘するだけでなく、改善につながる具体的な知識の補足や共有、技術の向上の助言までできるように配慮した充実した勉強会となりました。

【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

助産師の能力向上を促進するスマートフォン活用の研修

この数年、新型コロナウイルス感染症拡大による影響で、医療従事者を対象にした研修が中止されたり、受講人数が制限されるなど、貴重な研修の機会が限定されてしまいました。
こうした状況下で、感染症流行や自然災害などにより研修の実施が困難な場合に備え、助産師がスマートフォンで学習できるアプリ「セーフ・デリバリー(安全なお産)」やWEBサイトの教材が整備されました。

カンボジアでは携帯電話の普及が進んでおり、農村地でも多くの人々がスマートフォンを使用しています。そのため、医療現場でもITを活用した助産師の能力強化の取り組みが期待されています。
しかし、事業地の保健センターの助産師の多くが、メールアドレスを持っていないなどの理由で、アプリの登録やアカウント作成ができないなど、実際の活用に至っていないことが分かりました。

そこで、10月に助産師を対象にアプリの登録やWEB教材の利用方法を学ぶ研修を行いました。研修に参加していない同僚助産師にも、アプリの登録・利用方法の説明ができるよう振り返りが何度も行われました。
登録が早く完了し、その場で研修を受けている助産師もいました。


安全安心なお産に向けて、より多くの助産師がスマートフォンでいつでもどこでも知識や技術の向上に取り組んでもらえればと思います。
【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

PHJ本部スタッフによる現地からの報告

PHJ海外事業部の徳地(助産専門家)です。
10月3週目より事業地シェムリアップへ出張中です。

今回は、プロジェクトの活動進捗モニタリングと、
遠隔地にある保健センターで働く助産師への聞き取り調査などを
行うために来ています。

事業対象地の保健センターにおいて、保健センター長や助産師より母子保健サービスに関する様々な
聞き取り調査を行いました。

遠隔地の保健センターで妊婦健診や分娩介助を行っている助産師からは、
「分娩後の出血に対応できるようなスキルアップの研修を受けたい」、
「子癇*に関する知識や対応に関する研修を受けたい」
などの声が聞かれました。遠隔地の保健センターで働く助産師にとってはどちらも重要な知識とスキルです。
保健センターでは対応できない症例をいち早く診断できるための助産師の能力強化、
異常のある妊産婦を搬送できる保健システムの強化はPHJが現在取り組んでいる支援の一つです。

地域で活躍する保健ボランティアが定期的に保健センターに集まり、
意見交換や保健知識を学ぶ保健ボランティア会議にも出席しました。
35㎞離れた村からの参加者もおり、保健ボランティアのモチベーションの高さが伺われました。

PHJが作成した健康管理ノートを参加した保健ボランティア全員に配布し、
このノートを活用して村人の情報取集やモニタリングが行えるよう、記入方法についてPHJ現地スタッフが説明を行いました。
記載方法について活発な意見交換がされており、今後このノートを活用した住民の健康状態の記録が円滑に行われることが期待されます。

今回の出張における新たな発見の一つとしては、
現在においても遠隔地では伝統的産婆(TBA)が重要な役割を担っているということでした。
遠隔地においては、保健センターまで到着する前に間に合わず道端で出産してしまうということもあるようです。
そのためにTBAが保健センターまでの付き添いをするケースが多いようです。

本事業では保健施設での出産や医療者介助による出産の促進を目指していますが、、
陣痛が始まった後に、保健センターを訪問するか否か、また訪問するタイミングについての住民の判断に
大きな役割を担っていることが予想されます。
保健ボランティアに加え、地域で妊婦や住民から信頼を置かれるTBAにおいても
適切な保健知識や保健施設での出産の推奨、訪問するタイミングなどについて保健知識の教授が重要であると感じました。

数時間前に保健センターで生まれたばかりの赤ちゃん

現在ある仕組みや人材を有効に活用して、すべての妊婦が安心・安全なお産ができるよう、
地域の連携強化、搬送システムの強化、人材の能力強化などを引き続き行っていく必要があると再認識しました。

*子癇(しかん)とは​
子癇とは主に妊娠20週以降にはじめて起きるけいれん発作(てんかんや二次けいれんではないもの)のことで、
初産婦(初めて妊娠、分娩する女性)や若い妊婦、妊娠高血圧症候群の人に多いといわれています。

【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

保健センターまでの道のり

保健サービスへのアクセスの改善は、PHJの取り組みにおける大きな課題。
「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」
ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)を達成するには
物理的アクセス、経済的アクセス、社会慣習的アクセスの3つのアクセスの改善と、提供されるサービスの質が高まることが重要です。
今回はPHJの事業地における
物理的アクセスの困難さの一例をご紹介します。
カンボジアは現在雨季。
写真は今月撮影した農村地の道路。ほぼ川のような状況です。

村から医療施設である保健センターまで車で1時間半かかるとのこと。

4輪駆動の車でなければ渡れない、そんな箇所も多々あります。


村に住む人のほとんどは車は持っておらず、バイクで移動します。
この悪路を越えて保健センターに行く、というのは困難なのだと改めて感じます。
そしてたどり着いた先で適切なケアが受けられなければ意味がありません。

私たちが新しい医療施設を設置したり、医療者を配置することは困難ですが、
いざというときのコミュニティの連携・協力体制づくりを支援したり、
このような農村地域でのよりよい保健サービスを提供できるように支援します。

有効な保健ボランティア会議のために

保健ボランティア会議は、保健センタースタッフと保健ボランティアの連携を図る大事な機会です。
村での感染症の流行、妊娠・出産・死亡、住民の健康状態などの情報共有、保健センターや行政からの連絡、地域保健活動の提案・検討などが行われます。
また、地域行政機関・保健センター・保健ボランティア間の意思の疎通をはかると共に、相互の信頼関係を深め、連携の強化を目指しています。
PHJはこの会議の有効性や効率性を高めるために、定期的に観察し、フィードバックを行います。

8月は、対象となる保健センターで開催された保健ボランティア会議に参加しました。

たとえばある保健センターでは、会議の最後に保健ボランティアさんからの質問に答える形で必ず保健知識の復習を行います。
保健ボランティアさんが地域住民に聞かれて困っていることなどを質問し、保健センタースタッフからその場で回答が得られるため、大変有意義に会議が活かされていました。
そもそも会場が自宅から遠いために参加できないというケースもあります。

こうした課題を確認・把握し、よりよい運営に向けたアドバイスや改善策の提案を進めていきます。
【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

助産師会議の再開

6月27日と28日の2日間にわたり、ソトニクム保健行政区にて助産師会議(MCAT会議:Midwife Coordination Alliance Team会議)を開催しました。この会議は、助産師を中心とした関係者が、妊娠や出産に関わる課題や状況を共有したり、解決策を模索します。お産の現場に直結する重要な場でありながら様々な理由により開催されていませんでしたが、保健システム強化支援の活動として会議を再開しました。

会議には、シェムリアップ州保健局から2名、シェムリアップ州病院から4名、ソトニクム保健行政区から3名、リファラル病院から4名、保健センターから60名のスタッフが参加しました。

州保健局母子保健部長と保健行政区母子保健部長がファシリテーターとして会議を進行しました。 まず、ファシリテーターと州病院の医師から、分娩後異常出血についての講義が行われました。講義では、その予防と処置について説明されました。また、緊急搬送時にショックパンツを使用することで、出血量を減らし、ショック状態を改善することができることが説明されました。ショックパンツは、脚や腹部に空気を入れて圧迫することで血圧を上げる装置で、その使い方や注意点についても解説がありました。

次に、緊急搬送の現状についての情報共有が行われました。参加者は、自分たちが経験した事例をもとに、緊急搬送時に遭遇した問題や対処法を発表しました。問題として挙げられたのは、搬送先の確保や連絡の不十分、患者や家族の同意や費用負担の問題、交通手段や道路状況の悪さなどでした。対処法として提案されたのは、リファラル病院と連携して搬送先を速やかに確認すること、患者と家族に緊急搬送の必要性や費用負担の方法を説明すること、交通手段や道路状況に応じて最適なルートや時間帯を選択することなどでした。
会議では、参加者が積極的に意見交換を行い、リファラル・システム強化のための具体的なアクションプランも作成しました。

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現地事務所での事業オリエンテーションの実施

新しい事業の開始と共に、PHJカンボジア事務所が新体制になりました。
新しいスタッフも含めて、チーム全員で事業オリエンテーションを行いました。

事業を円滑に進め、活動の効果をもたらすためには、カンボジア事務所のチームワークが不可欠です。そのため、チーム全員がベクトルを合わせ、共通の理念や考えのもとに行動することが大切です。
そこでカンボジア事務所スタッフ全員で意見交換の場を設けました。

例えば、このようなテーマでの意見交換。

PHJの取り組みは「援助」ではなく現地の人々の自立を目的とした支援活動。
現地の人々が支援に「依存する」ことにならないように配慮しなければなりません。
この点について、「活動をするときに必ず目的を明確にすること」「現地の人々の自尊心向上に努めること」「自分たちが見本となること」などの意見があげられました

こうした意見交換を通して、カンボジア事務所のチーム全員が事業を進めるうえでの指針を確認し、これからの活動を進めてまいります。

【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】


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