ミャンマー政府関係者との事業評価会議を実施

2017年に始まった現在の母子保健事業も残すところ8ヶ月です。

最終年である今年度の中間となる2月に、ミャンマー政府関係者とともに、事業評価会議を開催しました。
ミャンマー政府からは、ネピドー公衆衛生局局長、タッコン郡保健局タウンシップ院長をはじめとした関係者8名、PHJからは、スタッフ全員が会議へ参加し、これまでの事業成果と計画を共有しました。
PHJは、これまで医療施設の足りていなかった地域への一次医療施設の建設や助産師・補助助産師の能力強化、地域に住む村びとの保健知識の向上や、村と医療スタッフをつなぐ母子保健推進員の育成などを含めた、5つの活動を実施しています。
これらの活動の成果として、自宅出産率の減少や妊産婦健診率が向上していることなどを共有しました。タッコン郡内では妊産婦死亡数の減少傾向が見られており、ネピドー公衆衛生局からは、PHJのタッコンでの取り組みに対して、高く評価されました。

さらに、事業終了に向けて、現在の各活動を現地スタッフが主体的に継続するための仕組みづくりへの取り組みと計画の概要を共有しました。ネピドー公衆衛生局からは、事業終了後も活動が継続することの重要性について、再度各関係者へ伝えられました。
ミャンマーは、医療者不足やインフラの未整備による医療アクセスの難しい地域等、安全で安心な出産環境までは課題が山積みです。会議では、そのような状況を少しでも改善しようと、保健医療に関わる各関係者ひとりひとりが、地域住民のいのちについて真剣に考え話し合う場となりました。

助産師のスキルの確認・指導

ミャンマーの助産師は、助産師学校を卒業後、単身任地へ派遣され、一つの医療施設を一人で受け持ちます。
学校で学んだ助産技術を現場ですぐに実践しなければなりません。
そして、1 人きりでお産を取り上げ、緊急時には全て一人で判断し、限られた薬剤を適切に用いて迅速な処置をしなければなりません。
また、臨床現場で求められる的確な判断力と技術には、経験と知識の応用が欠かせません。
しかし、卒業後、日本の医療人材が受けられるような十分な研修やサポート体制はありませんでした。PHJでは、ミャンマーの助産師たちが、安全な技術を身につけ、維持し、自信をもって地域での医療保健活動にあたることができるように、タッコン郡保健局による助産師のスキルモニタリングをサポートしています。
普段は地域での医療保健業務に追われて忙しい助産師たちが、あらためてじっくり自身の知識や技術と向き合い、保健局のスーパーバイザーからアドバイスをもらえる貴重な機会です。

以前PHJから寄付した胎児超音波心音系計(ドップラー)の使い方もチェックし、保健郡局保健師長が指導します。
今回は、妊婦健診や産後検診、新生児蘇生法などの技術の確認に加え、ケーススタディーを用いて、分娩時出血や妊娠高血圧症候群などへの対応についても再確認しました。

新生児蘇生法の技術チェックを行う様子

臨月の助産師も参加し、真剣に取り組んでいました。

ケーススタディーについてスーパーバイザーから指導を受けている助産師 (左から母子保健課産婦人科医、タッコン郡保健師長、臨月の助産師さん)

今回のモニタリングからの学びを活かして、助産師たちが自信をもって安全で確実な技術を提供することにより、安全なお産と元気な赤ちゃんのケアが実践されるよう、これからも支援していきます。

2,400本のポカリスエットを母子に配布

今回は企業からのあたたかいご支援の報告です。
長年PHJをご支援くださっている大塚製薬株式会社様からポカリスエット2,400本を寄贈いただき、母子保健教育に参加した妊婦さんや産後の女性や子どもに配布しました。

12月末になり涼しくなってきたとはいえ、ミャンマーの中でも中部に位置するここタッコン郡は熱帯性気候で一年を通して暑い日が多く、電気のない村にはもちろん冷房もなく、自宅から母子保健教育を実施しているサブセンターまで徒歩で来るお母さんや子どもは体力を消耗しています。
このような状況でのポカリスエットはとてもありがたく、配布時はみんな驚き、喜んでいました。

母子保健教育では、妊産婦さんや子どもたちが健康に過ごすために清潔な水の利用や健康的な食事に対する知識を伝えており、
ポカリスエットがその一躍を担ってくれました。
またこうした寄贈が、より多くの妊産婦さんや村びとが母子保健教育に参加するきっかけになればと思います。

完成したばかりのグイピンサブセンターでの出産が9件

PHJが活動を実施しているグイピン村では、今年の7月に村の1次医療施設であるサブセンターの建設が完了しています。

9月にはさっそく9件の出産があり、建築されたサブセンターが地域の方々に順調に利用されていることがわかります。
9月4日生まれの赤ちゃんと出産を介助した助産師さん

9月9日生まれの赤ちゃん(3.4㎏でした)

PHJのプロジェクトでは、医療施設建設後にも、母子保健教育活動や助産師と母子保健推進員との連携強化、施設利用のプロモーション活動等を通じて、建設した施設が村での安全なお産の場所として機能するように支援活動を実施しています。
今後も、施設の適切な利用が促進されるよう、地域のサポートを継続していきたいと思います。

タッコン郡保健局と事業評価会議を開催

9月下旬にタッコン郡保健局の職員と共に、事業評価会議を開催しました。
PHJは2014年よりミャンマーで母子保健支援活動に取り組んでいますが、現在の「農村地域の母子保健サービス改善事業」は2017年10月から始まり、今月で2年目を終えます。この会議では、2年間の事業成果と来年度の事業計画を共有し、事業終了後にも政府と現地の医療者が持続的に実施することができるように、今後の方向性を話し合いました。

2年目の活動では、グイピンサブセンターやミャウッミェイ地域保健センターの建設などのハード面の支援と共に、事業を拡大した地域での母子保健推進員の育成や母子保健教育などのソフト支援も強化し、より多くの母子に支援が届くように活動を進めました。

これまでの活動とミャンマー政府や地域の医療者の協力によって、以前は対象地域で約半数程度だった施設分娩が、今では7割を超えるようになりました。また、リフレッシュ研修やスキルモニタリングで能力強化した助産師や補助助産師が出産を介助する件数も増え、より安全で衛生的な環境の下、出産を迎える母子が増えてきています。
会議では、事業最後の年となる3年目に向けて、タッコン郡保健局や現地の医療者による持続可能となるような活動の方向性を、政府職員と話し合い、現地の医療者とも活発に意見交換がなされました。

グイピン村サブセンターの誕生

グイピン村に、サブセンターと呼ばれる一次医療施設が完成しました。

これまで、このサブセンターの管轄地域にあった医療施設は築約40年の助産師さんの家のみで、そこは窓にガラスもない、分娩室もない環境でした。
そのため、この地域の出産は助産師の介助のもと妊婦さんの自宅で行われることが多く、資格のない伝統的産婆の介助による出産もまだ残っていました。
そこでPHJでは、安全なお産のための丈夫で衛生的な医療施設を確保するべく、タッコン郡保健局と協力し、今回のサブセンターを完成させました。
(日本NGO連携無償資金協力の支援によるものです)

サブセンターの寄贈式

医療施設として必要な乳幼児用体重計や分娩台などの機器も寄贈し、医療設備が整いました。

分娩室の新生児用体重計

寄贈式の後には、グイピン村の村人たちが村の畑で採れた新鮮な野菜や豆を使ったミャンマー料理を用意してくれ、参列者みんなで囲んでお祝いをしました。
村中の人が、サブセンターの誕生を心からお祝いし、喜んでいる様子が感じられました。
サブセンターの土地は、グイピン村の村人から政府へ譲渡してもらったものです。
地主の方は、「経済状況に関係なく、老若男女すべての人が使うことのできる施設のために」との思いで土地を寄付してくださいました。
政府、村人、医療者すべての人が力を合わせて完成したサブセンターが、村人の健康を守る大切な場所になるよう、PHJはこれからも支援していきます。

妊産婦の身近で頼もしい存在「補助助産師」の研修

ミャンマーのタッコン郡には現在35名の補助助産師がいます。
補助助産師は6ヶ月の研修を受け、自分たちが居住する村で助産師の指導・監督のもと、無給で働く医療スタッフです。
村の妊産婦の健康相談に乗ったり、地域の助産師へつないだりするほか、助産師が不在の時には分娩介助を単独で行うこともあります。
そのため、補助助産師の知識や技術の質を維持することはとても重要です。
PHJでは、2016年からタッコン郡保健局と協力して補助助産師の卒後リフレッシュ研修を定期的に行い、彼らの知識と技術の質を維持することができるよう支援しています。

タウンシップ保健師長からのフィードバックを真剣に聞く参加者

今回の研修は、妊産婦健診や妊娠中の危険兆候、予防接種についての講義に加え、分娩介助実習を含めた内容でした。
天候の悪い中、悪路を片道3~4時間かけてバイクで来ている参加者や、前夜に村の妊婦さんが出血して
急遽町の大きな病院へ搬送するといった手配に追われ、睡眠不足のなか参加した人もいました。

分娩実習を実施する参加者

実習では胎児モデルを使用し、タウンシップ保健師長の指導・監督のもと、スキルチェックを行っていきます。
参加者同士で声を掛け合って間違いを正したり、不足を補い合ったりして、皆、真剣です。
参加した補助助産師からは、
「妊産期の危険兆候や全身の健診方法などの正しい知識を改めて確認できてとても自信がついた。」
「実習で自分の間違いを見つけて直すことができた。」といった声がありました。
各村で村民と居住を共にしながら活動する補助助産師は、村の人たちにとってとても身近で頼もしい存在です。
自身の知識と技術をアップデートした彼らが、より一層村の住民に寄り添う存在でいられるよう、これからも支援していきます。

タッコン郡3回目の助産師卒後教育の実施

ミャンマーの助産師は高等教育修了後、助産師学校で2年間の専門教育を受けた後、政府職員として採用され、村の一次医療施設のサブセンターに配属されます。
しかし、助産師学校を卒業してから、政府職員として採用されるまで、待機期間があることが現状です。
また、助産師として配属された後も定期的なトレーニングを受ける機会にあまり恵まれていません。
そのためPHJでは、2017年から活動地であるタッコン郡の助産師を対象に、郡保健局のスタッフを講師に迎えて定期的にトレーニングを行っています。
今回が3回目となるトレーニングでは、妊婦健診・分娩介助・産後検診・家族計画などの基礎的な知識や技術の他に、産後出血時の対応や新生児蘇生法などの緊急時の対応も学びました。
助産師から、講義よりも実演や模型を使った練習の方が身に着くという意見があったことから、トレーニングは講義と演習とを約半分ずつの構成とし、5日間実施しました。

会陰縫合術を学ぶ参加者
パルトグラム(分娩経過表)の演習

講師に質問したり、休み時間にも練習したりと参加者の熱心な様子が見られました。
今回トレーニングに参加した、カンターサブセンター助産師のメイジントゥンさんの感想です。
「2016年に他の地域で緊急産科ケアのトレーニングを受けてから、この地域に異動になり、この地域(タッコン郡)で初めて母子保健のトレーニングを受けました。
トレーニングでは、パルトグラム(分娩経過表)の書き方を学ぶことによって、自分のミスに気が付くことができました。」

カンターサブセンター助産師 メイジントゥンさん

PHJは、助産師が適切な技術や知識を維持・向上することで、多くの母と子の健康に寄与できることを望んでいます。

※この活動は八神製作所様、日本NGO連携無償資金協力のご支援の元、実施しています。

政府職員と事業モニタリング評価ワークショップを開催しました

毎年、年に1回、政府の関係者を招き、ワークショップ(会議)を開催しています。この会議ではPHJの活動の結果や成果を共有し、ノウハウが受け継がれることを目的としています。
今年度は2019年5月14日にミャンマー保健省、ネピドー公衆衛生局、タッコン郡保健局から関係者が集まり、開催されました。

前半はプロジェクトの進捗状況を説明し、後半はプロジェクトや活動指標の達成度を共有しました。
プロジェクトの大きな成果として、施設分娩(病院や村にある一次医療施設での出産)率が上昇していること、そして、ある地域では自宅分娩がゼロになったことが挙げられました。
達成要因としては、①村での母子保健教育で助産師が定期的に施設分娩の利点について説明していること、②村長が協力的で、育成した村のボランティアである母子保健推進員と共に、母子の安全のため施設分娩を推奨していること、③道が整備されたことが考えられました。
ネピドー公衆衛生局からはPHJのプロジェクトはとても効果的であるとの言葉を頂きました。
プロジェクトは2020年10月に終了予定です。次回のワークショップではプロジェクトのハンドオーバー(譲渡)に向けて準備しつつ、プロジェクト終了後も、現地の人たちが自分たちで活動を継続できるよう支援していきます。

施設整備モニタリング~医療施設内の衛生・整理状況の管理に向けて~

PHJはタッコン郡保健局スタッフと共に、村のサブセンター(一次医療施設)の衛生状況、器材や医薬品の整理状況の定期的なモニタリングを行っています。
この活動の目的は、PHJが支援した施設や供与した器材が適切に維持・管理されているかを確認すること、またPHJのプロジェクトが終了した後も、現地の人たちだけで適切な管理ができることを目指しています。
私たちの活動地であるタッコン郡では村のサブセンターに配属されている助産師や公衆衛生スーパーバイザーが施設の環境整備に務める役割があり、タッコン郡保健局が管理監督の役割を担っています。日本の医療施設では毎日清掃をし、衛生的に保つのが当然のことですが、ミャンマーでは清掃員がいなかったり、衛生的概念の違いなどから、適切に維持・管理することが難しい状況にあります。

サブセンター配属の助産師に指導するタッコン郡保健局のスタッフ

この活動が始まってから、清掃予定表を作成し、助産師が定期的に掃除するようになったり、供与した器材も適切に管理・維持できるようになってきました。
そして、管理監督しているタッコン郡保健局のスタッフもどこをチェックすればいいのか、モニタリングに慣れてきたようです。また、タッコン郡保健局の提案で、このモニタリングの際に、助産師の記録類の確認も行うようになりました。

助産師が作成した清掃予定表

モニタリングが定着し、現在ではタッコン郡保健局を監督しているネピド―公衆衛生局にもこの活動が評価されるようになりました。
今後は、プロジェクト終了後もモニタリングが定着するよう、モニタリング役の育成にも取り組んで行きます。

薬の消費期限を確認する新たなモニタリング役の地域保健センター所属スタッフ

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