専門家による保健行政区の評価と計画策定

ストゥントロン保健行政区による母子保健事業活動の評価と
2017年の活動計画策定のため、2016 年12月末に
国際保健の専門家である岡本美代子先生(順天堂大学 医療看護学部 大学院 医療看護研究科)を招き、
3日間かけてワークショップを実施しました。
保健行政区からは、保健行政区長、副行政区長、母子保健担当、結核担当が参加し、
PHJスタッフは現地スタッフ6名と駐在スタッフ3名が参加しました。
他の保健行政区の視察、成功事例やマネジメントの講義、それらを踏まえた
活動の振り返りと年間計画の見直しと再構築を行いました。

(チョンプレイ保健行政区を視察。その地域の母子保健の問題点とそれに対してどのような手段で問題解決を図ったか、事例を共有しました。)

(他の保健行政区、保健センター見学を通して得られたことを整理)
段階的できめ細かなワークショップにより参加者の理解が深まり、
保健行政区側も積極的に発言をしていました。
今回のワークショップの内容や学びを今後の活動に
活かしたいという前向きな意見も見られ、
2017年の保健行政区の活動が良いスタートを切ることができたのでは
ないでしょうか。

保健センターの補修・改善工事が進行中

PHJの活動地にある保健センターは、老朽化などの影響で利用者や働く人にとって危険な状態のままに使われているところがあります。
保健センターに関わる誰もが安心して利用したり、働いたりできるように現在2か所で補修や改善工事が進んでいます。
【天井改修工事:アレアッタノー保健センター】
センターに入ってすぐの玄関部分の天井。何かのきっかけで天井が落ちてきそうなほど無数の穴があいています。

工事中の様子

工事終了後、美しく生まれ変わった天井のもとで、話し合いが行われています。取り付けられた電燈、実は施工してくれた男性が、奥様がこのセンターで出産したとのことで寄贈してくださいました。

【土手埋め立て工事:クポッタゴン保健センター】
道路が土手の上にあり、保健センターとの間が谷のようになっているため、道路から保健センターに渡るときに転がり落ちる危険がありました。とくに夜間など周囲が暗いときなどは道路や橋などの境目が見えずらく危険が増します。

周りを煉瓦で囲い、埋め立て工事を始めたところ。

埋め立てがほとんど完了しています。これなら安心して保健センターに行けますね。

准助産師のトレーニングを実施

カンボジアの「准助産師」は1年の助産教育を受けている有資格者ですが、PHJの対象地域の保健センターでは臨床経験の少ない若い准助産師が多くいます。
そのため、PHJでは母子保健サービスの改善のために、保健センターで働く准助産師対象に能力強化トレーニングを行っています。
10月第1週目は対象地域の保健センターから准助産師が参加して講義形式のトレーニングを10名が受け、そのうちの4名が第2週目から少人数での病院実習を行いました。
講義形式のトレーニングや実習の様子を写真でご紹介します。
・分娩経過表(パルトグラム)の演習

お産の進行状況を一目で把握できるパルトグラムといったグラフの書き方を学んでいるところです。パルトグラムは、お産の進行中の異常の早期発見にもつながるため、とても大切です。実際の病院実習でもお産をみながらグラフを書き、今回のトレーニングを受けた准助産師全員がパルトグラムの記載ができるようになりました。
・赤ちゃんが生まれた後のケア

お産後に赤ちゃんの体温が保たれるようにすばやく羊水を拭き取ります。助産師学生がお母さん役、助産師役となって演習を行いました。
・実際のお産に立ち会う病院実習

約1か月におよぶ病院実習でそれぞれ10件ほどのお産を介助することで彼女たちの自信につながりました。

保健教育の事後テスト開始!

カンボジアでは支援地の村ごとに保健ボランティアが保健教育を行っています。
保健教育では、マラリア、デング熱、下痢症、衛生、結核、HIV/AIDS、妊婦健診、産後健診、家族計画、母乳哺育といった身近な10トピックについて教育を行い、村の人たちに病気や妊娠・出産に関する知識をつけてもらいます。

↑お母さんたちと一緒に村の子どもたちも真剣に話を聞いています!
 
10トピックすべての保健教育が終わったので、9月からは事前テストと比較して教育の成果を検証すべく、保健教育を受けたことがある村のお母さんたちを対象に事後テストを開始しました。
事後テストは 保健教育で学んだ10トピックから全部で20問が出題されました。


10月中旬にデータ集計を終えて分析した結果、事前テストと事後テストの平均正解率が51%から82%に大幅アップしていました。

保健センターの補修

農村の身近な診療所である保健センターは、妊婦健診や出産を行う大切な場所。
そしてまたスタッフ同士、保健ボランティアを集めての会議も行われます。
農村にとって不可欠な保健センターですが、
老朽化が進んでいたり、設備が不足していたりと
ハード面でさまざまな問題を抱え、時には危険なこともあります。
この保健センターには橋を渡らないと行けません。

センター側からみると、橋の両側が溝ができています。PHJスタッフも足がはまってしまったとか。

小さい子供だったらもっと危険なことになりそうです。
治療を受けにきた診療所でさらに怪我をしてしまったら
大変です。
穴を埋めて補修が必要です。
こちらは保健センターの天井。穴だらけですね・・・。

下のように各保健センターの設備を確認し補修をしていきます。

雨季における活動

6月に入り雨季が本格化し、スコールが降る日もあります。
PHJカンボジア事務所前の道路は水没し、
車が通るたびに水があふれ駐車スペースに水が入ってきます。
というわけでPHJカンボジア事務所は洪水が起こらない地域へ引っ越し中です。

農村地域の道、雨季はこういう状態です。

活動への影響としては、田植えが忙しくなり
保健教育などの活動に参加できなくなる場合があります。

6月は25村での保健教育を実施しました。
トピックは「予防接種」です。参加者は全部で654人(そのうち15歳未満の子供が270人)。
一村につき26人の参加者がありました。保健ボランティアで参加した人は50人中39人でした。
野良仕事があるため、村長に人集めを託して不在にする保健ボランティアもいました。

保健センター運営支援1年目の変化

2015年4月から開始した保健センター運営の活動が1年経過し、
変化が見え始めています。
たとえば
スタッフが理由なく不在のこともあった保健センターに
スタッフが常駐するようになったり、
器材の管理、衛生状態の管理も向上
し始めているとのこと。

また地域のニーズに応えられる
質の高い保健センターを目指して、
保健センター運営委員と保健ボランティアの会議では、
保健ボランティアが遠慮せずに言いたいことを言えるようになってきました。
村人の意見(困ったことや良かったこと)が伝えられ、保健センタースタッフもきちんと検討するようになった
とのことでした。
会議を通して、地域と保健センターの信頼関係が構築されると、
治療や健診、出産のために、
保健センターに出向く人も増えていくことが期待されます。

保健センターの運営の支援とは?

たとえばけがをしたり、病気になったりして、
病院に行くことを想像してください。

(二輪バイクで保健センターまで、という光景はよく見かける)
まず、病院にいくまでの道のりが遠い。
たどり着いた病院は、施設そのものが老朽化し、
清潔からは程遠い状況。
スタッフもぶっきらぼうに対応する。
そもそも、スタッフがいないことさえも珍しくない。

(支援地域の保健センターの内部)
そんな病院にあなたは行くでしょうか。
カンボジアの支援地域の保健センターは上のような状態が
珍しくありません。
PHJがカンボジアで実施している「保健施設機能強化」というのは、
そうした保健センターのハード・ソフト両面でサポートし、
患者さんや妊産婦さんが訪れたいと思う環境を
整えることを目的にしています。

保健センターの運営状況を確認する月一回の会議。
保健センターの衛生管理、器材管理、会議の実施などが
きちんとなされているかを確認します。
さらに保健センターに訪れる村人の声もここで反映されます。
たとえば二月のミーティングでは保健センターに行ったのに
助産師がいつもいない、という声が村人からあがってきている
ことについて話し合いました。
こうして問題を把握し、そして改善に向けて対策を考える
機会となるミーティングはとても重要です。
毎月の会議を繰り返すことで、
支援地の保健センターは大きく成長するでしょう。

年間分娩件数600件の保健センターとは?

あらためてカンボジアの保健センターについてご案内します。
保健センターは住民に最も身近な保健施設。保健センターでは予防接種や妊婦健診、分娩介助などの保健サービスを住民に提供しています。しかし、サービスを提供するための人材が不足しているため、PHJは人材教育を支援しています。
そうしたなかでも、住民に頼られる優秀な保健センターもあります。

下の写真に写っている生まれたばかりの赤ちゃんがいるのは
メサー・チュレイ保健センター。

ここの保健センターの出産件数はなんと年間600件。単純計算で1日2件弱。
他の保健センターで年間100件にも満たないのですから、地理的に有利な点があったとしても、この数字は目を見張るものがあります。

この保健センターに腕の良い助産師が大勢いるのかわかりませんが、
ここの強みをほかの保健センターにも共有することで、保健センターのレベルアップのきっかけになるかもしれません。
続いてほかの保健センターをご紹介します。たとえば下のオウ・ムルー保健センター。隣に小学校が併設されています。

今日は、若い夫婦が生後1か月くらいの赤ん坊を連れてきています。

予防接種を受けていました。これから頑張って育ててください!

カムカムクメールとの連携による教育活動

今月は地域住民への保健教育に合わせてNPOカムカムクメールという団体の口腔衛生教育を合わせて実施しました。
最初に保健教育を行い「家族計画」をテーマに家族計画の必要性や避妊の方法などを伝えました。

その後カムカムクメールにより、口腔衛生教育を実施しました。(くわしくはこちら
日本から来た歯科医師や歯科衛生士が優しく歯の健康について話し、
実際に歯ブラシを配って歯磨きの方法について指導しました。

また、カンボジア人の学生が手洗いの歌を歌って、
楽しく衛生について教育を行いました。


歌に合わせて楽しみながら歯磨きや手洗いを教わる子供たちは真剣そのもの。
教育活動をしているPHJとしても学ぶことの多い教育方法でした。


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