カンボジア 活動レポート

2026年8月24日

支援はただの贈り物ではない。地域が自立するためのプロセスだ

ピープルズ・ホープ・ジャパン(PHJ)のカンボジア事務所で、所長代理兼プロジェクトオフィサーとして活躍するダラさん。看護師・医療助手として働いた経験があり、公衆衛生学の修士号を持つ彼が、なぜPHJを選び、どのような想いで現場を率いているのか。ストーリーをお届けします。


医療の経験を活かし、NGOの現場を支える役割へ

私はPHJに加わる前、看護師や医療助手として病院の最前線で患者さんのケアにあたり、看護学校の教官も務めていました。
さらに、高齢者のための地域眼科ケアの管理や、公衆衛生の専門知識(修士号)を活かした国際NGOでの母子保健プログラムの管理・調整など、長年にわたり医療と地域開発の分野で経験を積んできました。カンボジアには多くのNGOがありますが、私がPHJで働くことを選んだ理由は、その理念である「人間尊重、効果性、効率性、中立性」に深く共感したからです。PHJの活動は、既存の政府保健システム、州保健局や保健センター、保健ボランティアを最大限に活かし、彼らの能力を持続的に高めていくアプローチをとっています。この「現地の人々が主役となり、持続可能な発展を目指す」姿勢が、私の経験やビジョンと完全に一致したのです。

助産師研修にて一番右がダラさん
助産師研修にて一番右がダラさん

「違い」を否定しない、村の文化に寄り添う対話
カンボジアの村々には、それぞれ独自の習慣や古い信仰があります。 例えば、「妊娠したら、賢くきれいな子が生まれるようにアヒルの卵を食べるべきだ」と信じられていたり、「占い師の助言に従い、太陰暦の縁起の良い日に子作りをすれば、強くて賢い子が育つ」と考えられていたりします。 私たちは、保健教育を行う際、こうした村の慣習を頭ごなしに否定することは絶対にしません。
PHJの「人間尊重」の価値観に基づき、地元の文化や伝統に敬意を払い、相手の尊厳を守るために、私たちの行動や態度をその習慣に合わせて調整します。 地域開発に携わる者として、まずは現地の文化を学び、素朴な身なりや、柔らかい姿勢を保ちながら双方向の対話を行うこと。これが、村の人々と深い信頼関係を築くための私の秘訣です。

左から2番目がダラさん 保健センタースタッフと

変わる村の意識
PHJの地道な活動は、村の人々の行動や考え方を変えつつあります。自宅での出産が一般的だった地域でも、今では妊産婦さんたちが妊婦健診に行ったり、保健センター・病院といった安全な施設で出産することの大切さを深く理解するようになりました 。
「赤ちゃんを安全に産みたい」という意識が地域全体に浸透したことで、多くの妊婦さんが妊婦健診を保健センターで受け、医療スタッフのサポートのもとで出産を迎える準備を整えています さらに、保健センターの助産師たちの対応も大きく変わりました。彼女たちがお母さんや子どもたちに対して、おもてなしの心(Hospitality)と敬意を持ってフレンドリーに接するようになり、施設全体のサービスの質が大幅に向上しています。

現地が自分たちの力で機能し続けること
自立を支えるPHJの哲学 私がPHJの活動で最も「素晴らしい」と感じているのは、将来的な「自立」を徹底的に見据えている点です。 私たちは予算を非常に厳格に、かつ透明性を持って管理しています。そして、現地の人々に対して常にこう伝えています。 「これは単なる贈り物ではない。地域と機関が成長し、自立するためのプロセスなのだ」と。 PHJが一方的に物資を与えるだけでは、支援が終わった瞬間に活動も止まってしまいます。私たちは、地元の医療スタッフや村の保健ボランティアに役割と責任を委ね、彼ら自身が「自分たちの地域の命は、自分たちで守る」という当事者意識を持てるよう、背中を押し続けています。 いつかPHJがこの地から撤退したとき、現地の保健システムが自分たちの力で機能し続けること。それこそが、私たちが日々泥臭く汗を流しながら目指している、真のゴールなのです。

成果発表をするダラさん

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