カンボジア 活動レポート

2025年4月28日

出張レポート:後編「助産師と保健ボランティアの研修、村での保健教育の実際」

カンボジア事業担当(助産師)の宮副です。
前回に続き、カンボジア事業の視察報告です。

PHJでは、プロジェクト活動の一環として、保健センタースタッフやボランティアの知識・技術向上のための研修を行っています。今回はその中から、助産師対象の研修と保健ボランティア対象の研修の様子をお伝えします。

【助産師研修】
2月は「人間的なお産」をテーマにした研修が開催されました。25か所の保健センターの助産師を対象に座学と実技の両面から学ぶ10日間のプログラムです。
「人間的なお産」とは、妊産婦さん一人ひとりに寄り添い、安全かつ安心して出産できる環境を整えること。
必要な医療介入は適切なタイミングで行いながら、妊産婦さんの気持ちや尊厳が大切にされることを目指す考え方です。
今回の研修は、JICAの「カンボジア王国 助産能力強化を通じた母子保健改善プロジェクト 」の内容を参考にしています。
講師からは「助産師の知識や技術レベルに差がある」との指摘がありしっかりと学びなおす機会となりました。
内容は、妊娠・分娩・産後・新生児ケアまで幅広く、私が視察した日は主に分娩期を中心に進められていました。午前は実技、午後は座学とテストによる復習というスケジュールです。

研修を終えた助産師たちからは、「妊婦健診から分娩介助まで、一連の流れを改めて整理できた」「スキルアップにつながった」「妊婦さんや産後のお母さんに、もっと寄り添ったケアを心がけたい」といった声が聞かれました。

カンボジアの保健センターでは、助産師が24時間体制で待機していますが、人数も物品も必要最小限。
経験の浅いスタッフも多く、日本のように先輩が手厚くフォローする体制ありません。正常と異常の判断ができるようになるまで、現場で経験を積むしかないのが現状です。
だからこそ、今回のような研修はとても貴重な機会です。学んだ内容を持ち帰り、スタッフ同士で共有し、振り返りを重ねていくことが、よりよい妊産婦ケアにつながります。

【保健ボランティアの能力強化研修】
保健センターの助産師や看護師だけでは、地域すべての妊産婦さんに十分な支援が行き届くわけではありません。
そこで大きな役割を担うのが、地域と保健センターをつなぐ「保健ボランティア」の存在です。この研修では助産師が講師となり、妊娠中の保健教育について座学と実技チェックを行いました。

〈主な内容〉
・妊婦健診4回受診の推奨と産前ケア
・出産予定場所、交通手段、緊急時の移送について
・妊娠中の栄養と経済的な備え
・妊娠中の危険な兆候と病院受診について
・新生児ケアについて
ボランティア
実践形式のグループワークも行われ、活発な意見交換が行われていました。

今回の研修は2回目だったこともあり、参加者の発言や演習の態度から自信が感じられました。

 

ボランティア研修の後は・・・
研修を受けたボランティアは、実際に村で保健教育の活動を行います。

今回同行した活動でも朝早い時間にも関わらず、多くの住民が集いました。
話の途中で自由に質問が出るなど、にぎやかで和やかな雰囲気です。
緊張しているボランティアもいましたが、回数を重ねるごとに少しずつ慣れてきているようでした。

地域住民への保健教育
家庭訪問による保健教育

日本のように「異常があれば入院する」という仕組みは、ここにはありません。
だからこそ、日々の生活の中でどう過ごすか、どんな時に受診すればよいのか、こうした保健教育はとても重要です。

また、妊婦さん本人だけでなく、その家族への理解を広げることも大切です。文化的に男性の意見が重視される場面も多いため、男性ボランティアの存在や、さまざまな世代の参加が活動の鍵となります。

【おわりに】
助産師と保健ボランティア、保健ボランティアと地域住民。
それぞれが信頼関係を築き、連携していくことが安心・安全なお産につながります。

最終的な目標は、こうした活動が現地の人たち自身の手で続いていくこと。地域の力で、母と子の健康を守れる仕組みづくりをこれからも目指していきます。

【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】


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