インドネシア 母子健康地域保健医療システム強化

活動地

バンタン州セラン県はジャワ島西部に位置する(バンタン州は旧西ジャワ州)。首都ジャカルタから高速道路を車で約2時間ほど行ったところに州都セラン市がある。当初の活動地域は、チャレナン地区・ティルタヤサ地区・パブアラン地区・チオマス地区・パダリンチャン地区の5地域。これらの地域はセラン市から更に50km以上離れている地域もあり、車では1時間。(セランってどんなとこ?

経緯

活動を始めるきっかけとなったのは、経済危機の真只中1998年暮に外務省からの現地状況についての委託調査でした。
 調査結果は「地域医療(特に母子保健)の強化」が必要という結論でした。PHJは2001年10月にインドネシア保健省と協議の上、候補地(赤ちゃん、幼児、妊婦の死亡数が多い地域)数箇所の現地調査を開始しました。「どうして死亡数が多いのか?」「死亡時の状況はどうだったのか?」「地域医療の現状はどうなっているのか?」などを知るための現地での聞き取り調査でした。
 調査で分かったことは、「赤ちゃんを直接土の上に寝かせる」「産婆・助産師が来た時にはすでに手遅れだった」「栄養不良」「村の衛生問題」などでした。
 州・県保健局の積極性も勘案して、セラン県を選び、保健局職員や医療従事者は勿論のこと、伝統的産婆・村長・宗教指導者・赤ちゃんを亡くした家族などに集まってもらい「現状(問題)把握」「問題分析」「具体的解決策」を協議しました。 そこで出された声は「村から診療所への交通手段がない」「経済的理由で母子健康は後回しにせざるを得ない」「住民の医療知識がない」「伝統的産婆が分娩用道具を持っていない(竹でできたナイフでへその緒を切る)」「診療所に医師・助産師がいない」「問題が生じた時にどこへ行けばよいのかわからない」などでした。
 その結果に基づいてこの案件を外務省に提案の結果採用され、平成15年度日本NGO支援無償資金協力事業としてスタートしました。

「日本NGO連携無償効果検証シート」参照(PDF)

現在の活動

地域保健医療システム強化事業は主に、「母子健康改善活動」「栄養改善活動」「地域医療連携システム強化活動」から構成されています。また活動地域は2010年度からテイルタヤサ自治区に絞って活動しています。

「母子健康改善活動」

「母子健康改善活動」は、女性と幼児の健康のキーとなっている、各診療所や村の助産師・伝統的産婆ヘルスボランティアに母子保健の知識や技術を指導して、1人でも多くの女性や幼児に健康になってもらうための活動です。

男性の産婆さんに分娩指導する助産師

■ どのように活動を進めるの?

まずは、助産師が先生的な立場で皆を指導できるように、簡単な「教育学」について基礎的な勉強をしてもらいます。その上で、安全なお産の介助ができるようなるための「正常分娩」研修や幼児の栄養・母子保健などの講義を受けます。
  その後、助産師は勉強したことを診療所や村で伝統的産婆やヘルスボランティアに教えます。さらに、伝統的産婆やヘルスボランティアは村の女性を教育します。時間はかかりますが、「村の人々が健康に生活できるよう」に村人によって「人から人へ」確実に伝えていきます。

「栄養改善活動」

身長計測しています

「栄養改善活動」の基本は、5歳未満の栄養不良幼児の死亡率を改善するために、栄養補給給食を配給する活動です。

 この活動の手順は、対象幼児を決め効果を確認するため 
1.身体測定、
2.給食メニュー考案、
3.ボランティア調理人への調理実習、
4.給食配給(1サイクル=12週間、週3日朝・夕)、
5.身体測定、
となっています。


自宅台所で給食調理するヘルスボランティア

■ 給食メニューは?

給食メニューは各診療所により考案されます。

 給食メニュー考案で大事なことは、村で調達し易い食材を使用する事・安い食材を使用する事・幼児の発育に必要な栄養素(動物性タンパク質、植物性たんぱく質、カルシウム、鉄分、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD)が含まれる事・子供が好んで食べる事などです。

 この活動も、村人の自助努力により実施されています。村に住む女性がボランティアとして調理・給食配給を担当しています。活動開始以来50種以上の新メニューを開発しました。

 この活動のもう一つの特徴は、栄養クリニックの設置と専任助産師による母子栄養カウンセリングの実施です。
きめ細かいフォローアップにより「栄養失調・不良児の数が減り、元気に遊びまわる子供が増えた」と各地域から嬉しい声が届いています。
(2004年6.3%→2006年1.5%→2010年0.13%)

2010年度からは母親に対して食育の大切さをテーマに栄養教育も開始しています。活動の充実に伴い、2011年度にはテイルタヤサ自治区診療センター内に栄養教育センターを設置し、ここを栄養教育活動の拠点としています。

「地域医療連携システム強化活動」

「地域医療連携システム強化活動」は、村レベルでの医療サービスから郡立医療機関までの連携ネットワーク確立を目指しています。村レベルでの連携として「助産師・産婆パートナーシップ」、地域レベルでは「助産師・診療所連携」、そして「診療所・病院・クリニック連携」とグループ化をして活動しています。

 例えば、「助産師・産婆パートナーシップ」では、助産師自ら産婆への聞取り調査と-教育を実施、「助産師・診療所」レベルでは診療所内での研修や情報交換、「診療所・病院・クリニック連携」では、助産師の研修を病院・クリニックの産婦人科医師・看護婦・助産師と連携して活動を行っています。 また母子医療サービスを強化するために、セラン県で一番大きい診療所を「母子クリニック」とすることにし、分娩に必要な医療機器を整備しました。

地域医療強化は地域の協力・自助努力なしでは達成できません。セラン県の地域全体で「地域医療(特に母子健康)の重要性」を真剣に考えてもらうためのセミナーも開催し、医療関係者のみならず村の行政担当者や宗教指導者などが参加しました。

 村人への保健啓蒙教育を、保健ボランテイアや保健行政と一緒になって実施する一方、保健行政には助産師の増員を強く要求して来ました。その結果助産師が倍増し、より安全な出産の可能性が増加しました。

※それぞれ画像をクリックすると、別ウインドウでPDFが表示されます。

 しかし、村には24時間体制で保健・医療サービスを提供できる施設がありません。助産師たちが活動する拠点は母子保健センターや保健保育センターですが、PHJが活動する対象の14村の内まだ数ヶ所しか整備されていません。2010年度からは改善意欲の高いテイルタヤサ自治区内の村から順次、母子保健センター等の建設支援を行っています。 これらの母子保健センターには、「きれいな水・安全な水」の確保も必要です。上水道がなく電力余裕のない地域ですので、PHJは太陽光発電駆動の井戸を堀り、大変喜ばれています。また2010年度には海上40Kmの離島(トゥンダ島ワルガサラ村、人口1800人)には太陽光発電照明を備えた助産所を整備しました。

※画像をクリックすると、別ウインドウでPDFが表示されます。
インドネシアMDGs推進母子保険改善プログラム

プログラムの将来

 今までは現在は「母子健康改善活動」「栄養改善活動」「地域医療連携システム強化活動」を別々に実施していましたが、2010年度からは将来は「母子健康改善活動」と「栄養改善活動」が「地域医療連携システム」の一環として村の定常的な活動として村人によって継続されるような地域医療環境を整えつつあります。
  これからは、妊娠した時・病気になった時にも安心して医療サービスが受けられる環境(例えば、搬送手段の整備、診療所の更なるサービス向上)、クリーンな環境・衛生整備により病気予防できる環境、幼児が遊び・勉強できる環境を整えることです。
 私たちの活動は「保健・医療」が中心ですが、この「地域医療連携システム」を核にして地域全体が発展していく結果となれば非常に嬉しいことです。

用語の説明

伝統的産婆:
大半が医療教育を受けていない産婆で、複雑な出産には危険が伴う。
ヘルスボランティア:
保健衛生に関する基本的な知識の教育を受けたボランティアで、地域で健康相談や衛生指導を始めとする、健康づくり活動の推進を図っている。